はじめに
企業において、生命保険を利用している企業は多いと思います。
このとき、どのような形で生命保険を利用するのか、いくつかのパターンがあります。
そこで今後、生命保険の利用を考えている方を含め、そのパターンを説明します。
生命保険の利用のメリット
企業にとって、生命保険を利用するメリットとしては、大きく分けると、次の2つがあると思います。
・事象が発現前
ある事象が発生する前は、保険料が損金扱いになれば、節税の効果を得ることができます。
そして、貯蓄性のあるものや解約返戻金があるものならば、貯蓄という効果も得られます。
・事象が発現後
ある事象が発生した後は、それに対する資金を得ることができます。
すなわち、商品によって当然異なりますが、「節税」「貯蓄」「資金調達」の3つの効果があります。
生命保険の利用パターン
企業において、生命保険を利用するパターンとして、次のようなものが挙げられます。
①事業承継対策
事業承継にあたっての資金対策や株価対策
②退職対策
役員・従業員が退職したとき、その退職金や死亡保障などの対策
③福利厚生対策
役員・従業員が疾病などをしたときの対策
これらの目的に合わせて、上記の「節税」「貯蓄」「資金調達」の視点で、どのような商品を選ぶかがポイントになります。
生命保険の基本商品
生命保険としては、大きく分けると、次のようなものがあります。
・終身保険
・定期保険(平準定期保険・逓増定期保険・長期平準定期保険)
・養老保険
・ガン保険
終身保険
被保険者が亡くなるまで保障が一生続くものです。
途中で保障が不要になったときには、解約返戻金という形でお金が戻ってきます。
このことから、保障があるとともに、貯蓄性があり、死亡や相続対策などで利用できますが、支払保険料は保険積立金という形で資産計上され、節税の効果はありません。
定期保険(平準定期保険・逓増定期保険・長期平準定期保険)
保障が一定期間のみ有効な保険で、解約返戻金がどの程度なのかで、貯蓄性があるかどうが異なってきます。
税務上は、最高解約返戻率で、取り扱いが異なることになります。
50%以下 … 支払保険料は全額損金(資産計上(保険積立金)はなし)
50%超~70%以下 … 保険期間の前半4割相当の期間、支払保険料の40%を前払保険料として資産計上
70%超~85%以下 … 保険期間の前半4割相当の期間、支払保険料の60%を前払保険料として資産計上
85%超 … 最高解約返戻率となる期間の終了日まで、支払保険料×最高解約返戻率×70%
(ただし、最初の10年間は90%が前払保険料として資産計上)
このことから、貯蓄性があるかどうかは、解約返戻金によって異なりますが、税務的には、解約返戻率で税金を支払うタイミングが異なり、資金対策に影響がでてくることになります。
例えば、1万円の保険料掛けたとき、解約返戻率が50%ならば、その年にすべて損金とできますが、解約返戻率が55%ならば、最初は6千円が損金、後に残りの4千円を損金とすることになります。
養老保険
保障と貯蓄を兼ね備えた保険で、保険期間は一定ですが、保険期間中に亡くなれば保険金が支払われ、保険期間が終了すれば、満期保険金が支払われます。
また、途中で保険が不要になれば、解約返戻金も戻ってきます。
税務的には、契約者が法人、被保険者が役員・従業員で、死亡保険金受取人が遺族や満期保険金受取人が法人の場合には、支払保険料の1/2が保険料積立金として資産計上されます。
ガン保険
ガンなどの疾病にかかった場合の保険で、役員・従業員の福利厚生に役立つと考えられます。
税務上は、保険料の1/2が前払保険料として資産計上されます(2012年4月27日以降の契約)。
まとめ
上記の利用目的やその効果に合わせて、どのような生命保険の商品を選ぶかが重要になります。
参考
塩見哲『中小企業の資金調達 大全』
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