概要
税金の計算において、その概算を知りたいときがあります。
特に、財務的なシミュレーションを行う場合に、細かな税金の計算をすると、煩雑になるため、簡易に税金が計算できる方法が求められます。
このときに使われるのが、「実効税率」です。
計算式
実効税率においては、法人税、地方法人税、法人住民税、事業税をベースに計算されます。
(当然、他の税金なども発生する可能性もあるのですが、省略されています)
このとき、実効税率は、次式で計算されます。
実効税率 = [ 法人税率+{法人税率×(地方法人税率+住民税率)}+事業税率]÷(1+事業税率)
なお、住民税などは、均等割という形で固定的な税金が発生しますが、このようなものも省略されています。
導出方法
では、どうしてこのような式になるのでしょうか。
特に、分母に事業税率があり、なぜそうなるのかが、ちょっとやっかいです。
そこで、実効税率の計算式について、導出方法を説明します。
上記のどの税金も、基本的には企業の所得をベースに税率が掛けられて計算されます。
ただ、事業税については、租税公課という形で損金算入が可能です。
ですから、計算において対象となる所得については、次のような違いが生じます。
法人税、地方法人税、住民税 ⇒ 事業税課税後の所得
事業税 ⇒ 事業税課税前の所得
このことを考え、事業税課税前の所得をEとすると、まず事業税は
事業税 = E × 事業税率
と計算されます。法人税は、事業税課税後の所得に法人税を掛けたものになるのですが、「事業税課税後の所得 = E ÷ (1+事業税率)」が成立するので、
法人税 = 事業税課税後の所得 × 法人税率
= E ÷ (1+事業税率)× 法人税率
となります。
そして、地方法人税と住民税については、地方法人税と住民税は法人税額をベースに課税されるため、
地方法人税 + 住民税 = 法人税 × (地方法人税率 + 住民税率)
となります。
これらの式を合わせると、
税金 = 事業税 + 法人税 + 地方法人税 + 住民税
= (E × 事業税率) + (E ÷ (1+事業税率)× 法人税率) + {(E ÷ (1+事業税率)× 法人税率)×(地方法人税率 + 住民税率)}
= E × [ 法人税率+{法人税率×(地方法人税率+住民税率)}+事業税率]÷(1+事業税率)
となり、Eを除いた税率だけで表されている部分が、実効税率となります。
計算例
法人税率15%、事業税率7%、地方法人税10%、住民税4%の場合には、
実効税率 = {0.15 + 0.15 × (0.1+0.04)+ 0.07}÷( 1 + 0.07 ) = 0.225
となり、実効税率は22.5%となります。
参考
小林啓孝『現代原価計算講義』
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