はじめに
リーダーシップについて、どのようにお考えでしょうか?
例えば、織田信長や西郷隆盛のような歴史上の人物を見ると、その人が生まれ持った資質のように思ったりもします。
しかし、経営学的に言えば、このような考えは否定されています(上記のような考えを特性理論と言います)。
むしろ、リーダーシップは、その人の資質だけではなく、その環境や他の人との関係性などで、パフォーマンスが変わるというのが、経営学的には一般的な考えです。
そして、このような考えに基づいた経営学の考えとして、「パス・ゴール理論」というものがあります。
パス・ゴール理論の前提
パス・ゴール理論とは、リーダーは、どのようにフォロワー(部下)の目標達成を支援するかというものです。すなわち、ゴールを決めるフォロワー(部下)がいて、どのようにリーダーは、うまいパスを出すのかということを考えます。
このことから、パス・ゴール理論の前提においては、次のような前提があります。
・リーダーは、状況に応じて、そのリーダーシップを柔軟に変えることができる
・リーダーが直面する状況としては、環境状況とフォロワー(部下)の状況の2つがある
すなわち、環境や部下の状況に応じて、どのようなリーダーシップをとって、フォロワー(部下)をサポートするのか、環境や部下の状況を見て、どのようにフォロワー(部下)と接するのがいいのかを説明するのが、パス・ゴール理論となります。
リーダーシップ行動
パス・ゴール理論では、リーダーシップ行動を、次の4つに分類し、柔軟にリーダーはこの行動を変えられると考えます。
指示型リーダー | フォロワーに対して何を期待しているかを伝え、作業スケジュールを設定し、職務達成方法を具体的に指示する |
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支援型リーダー | フォロワーのニーズに気遣いをし、友好的に接する |
参加型リーダー | フォロワー達と相談し、その提案を活かした決断する |
達成志向型リーダー | 容易に達成できない目標を設定し、フォロワーが全力を尽くすことを期待する |
環境状況変数と従業員状況変数
上記のようなリーダーシップ行動を起こす上で、リーダーは、2つの変数の影響を受けるとされます。
環境状況変数
これは、フォロワーが自由に変えることができない要素のことで、次のようなものがあります。
・職務構造
・正式な権限関係
・職務グループ
従業員状況変数
フォロワーの個人的な特性で、次のようなものがあります。
・ローカス・オブ・コントロール(自分の人生は自分がコントロールしていると信じている度合い)
・経験
・認識している能力
成果
以上のもと、パス・ゴール理論では、リーダーは、環境状況変数と従業員状況変数のもと、あるリーダーシップ行動をとったとき、どのような成果が得られるかを考えます。
言い換えると、環境や従業員の状況に適合したリーダーシップ行動をとると、成果は上がりますが、逆にその状況に合わないリーダーシップ行動をとると、十分な成果は期待できないとされます。
具体的には、次のようなものがあります。
(職務について)
明確な場合 … 支援型リーダーシップの業績は高く、フォロワーの満足度も高くなります。
リーダーは、フォロワーの支援だけで、具体的な指示は不要となります。
不明確な場合 … 達成志向型リーダーシップだと、挑戦的な目標で、フォロワーの期待を高めるため、高業績につながります。
また、ストレスが多い場合には、フォロワーは何をすべきかは分からないので、指示型リーダーシップの満足度は上がります。
(経験、認識している能力について)
フォロワーにこれらがある場合には、自身に職務遂行能力が備わっているので、指示型リーダーシップは不要だと思われる傾向が強くなります。
(グループ内の対立について)
グループ内に対立があると、主導者が求められるので、指示型リーダーの満足度が上がります。
(ローカス・オブ・コントロール)
内部型 … フォロワーは自分自身で事態を変えられると考えるので、参加型リーダーシップだと満足は上がります。
外部型 … フォロワーは自分が置かれた状況を外部環境によるものだと考えるため、指示型リーダーシップの満足度が上がります。
まとめ
以上のように、パス・ゴール理論においては、環境や従業員の状況によって、とるべきリーダーシップは異なることになります。
当然ながら、様々な類型があり、組み合わせも多いので、このままこの理論を使い、どうこうできるわけではありません。
ただ、リーダーにとっては、環境や従業員の状況を見て、そのスタイルを変える必要があるというのは、非常に重要な考えだと思います。
参考
スティーブン P. ロビンス、デービッド A. ディチェンゾ、メアリー・コールター『マネジメント入門』
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