就業規則
常時10人以上の労働者を使用している(雇っている)場合に、労働基準法上、「就業規則」の作成義務が課されています。そして、このような事業者が就業規則を作成していないと罰則を受けることになります。
(なお、仮に、常時10人以上の労働者を使用していなくても、就業規則を作成していけないというわけではありません)
(労働基準法89条)
第八十九条 常時十人以上の労働者を使用する使用者は、次に掲げる事項について就業規則を作成し、行政官庁に届け出なければならない。次に掲げる事項を変更した場合においても、同様とする。(労働基準法120条1号)
第百二十条 次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
一 (略)、第八十九条、(略)の規定に違反した者
このとき、就業規則では、3つの記載事項があり、これらを説明したいと思います。
・絶対的記載事項
・相対的記載事項
・任意的記載事項
3つの記載事項
絶対的記載事項
就業規則に記載しなければならず、1つでも記載がないと、30万円以下の罰金という刑事罰が科されるものです。
そして、絶対的記載事項としては、次のようなものがあります。
労働者が働く上で、基本的なものが絶対的記載事項となっています。
労働時間等 | 始業・終業時刻、休憩時間、休日、休暇、交替勤務 |
---|---|
賃金 | 賃金の決定・計算・支払方法、賃金の締切り、支払の時期、昇給 |
退職 | 身分の喪失に関する事項(任意退職、解雇、定年など) |
なお、法律的には、次の通りです。
(労働基準法89条1項~3項)
一 始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて交替に就業させる場合においては就業時転換に関する事項
二 賃金(臨時の賃金等を除く。以下この号において同じ。)の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
三 退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
相対的記載事項
絶対的記載事項とは異なり、義務付けられていませんが、定め・ルールを設けるときには、就業規則に記載しなければならないものです。
(定め・ルールがあり、就業規則に記載していなければ、上記の違反となります)
相対的記載事項としては、次の通りです。
なお、新設の場合はもとより、社内で慣行的に存在する場合にも、明記が必要とされます。
退職手当 | 退職金・退職年金が適用となる労働者の範囲、その決定・計算・支払方法と適用時期 |
---|---|
臨時賃金など | 臨時賃金の支給条件と時期、最低賃金額 |
負担 | 食事・作業用具などの負担 |
安全衛生 | 安全衛生に関する事項 |
職業訓練 | 職業訓練に関する事項 |
災害補償、業務外の傷病扶助 | 災害補償、業務外の傷病扶助に関する事項 |
表彰・制裁 | 表彰・制裁の種類・程度 |
その他 | 事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合は、その事項 (例)服務規律、配置転換・転勤・出向・転籍 など |
なお、法律的には、次の通りです。
絶対的記載事項と異なる点は、いずれも「定めをする場合においては」という文言がついている点です。
(労働基準法89条3の2項~10項)
三の二 退職手当の定めをする場合においては、適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び支払の方法並びに退職手当の支払の時期に関する事項
四 臨時の賃金等(退職手当を除く。)及び最低賃金額の定めをする場合においては、これに関する事項
五 労働者に食費、作業用品その他の負担をさせる定めをする場合においては、これに関する事項
六 安全及び衛生に関する定めをする場合においては、これに関する事項
七 職業訓練に関する定めをする場合においては、これに関する事項
八 災害補償及び業務外の傷病扶助に関する定めをする場合においては、これに関する事項
九 表彰及び制裁の定めをする場合においては、その種類及び程度に関する事項
十 前各号に掲げるもののほか、当該事業場の労働者のすべてに適用される定めをする場合においては、これに関する事項
任意的記載事項
労働基準法として定められてはいませんが、記載することが望ましいとされるものです。
なお、労働基準法に規定がないので、就業規則に記載しなくても、問題はありません。
(例)・企業理念、目的
・採用に関する事項 など
参考
小島彰(監修)『図解で早わかり 最新版 労働契約と就業規則のしくみ』
e-Gov法令検索「労働基準法」
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