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ドーフマン・スタイナーの最適広告費定理

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はじめに

 経営上、広告・PRは重要です。
 そして、

  「広告費をどの程度にしたらいいのか」

  「広告費を課題ではないか」

などの疑問が生じることがあります。

 一般的には、売上の3%ぐらいが広告費として相応しいなどといった話もありますが、本稿では、その1つの考えとして、ドーフマン・スタイナーの最適広告費定理を紹介します。

ドーフマン・スタイナーの最適広告費定理

 ドーフマン・スタイナーの最適広告費定理(Dorfman-Steiner Advertising Rule)とは、次のようなものです。

 「独占企業における売上に対する広告費の比率は、需要の広告弾力性と需要の価格弾力性の比が最適である」

 広告費を$ A$、価格を$ P$、需要を$ X$ とすると数式で表すと、売上は$ PX$ と表せるので、次式のようになります。

  $ \dfrac{A}{PX} = -\dfrac{\varepsilon_A}{\varepsilon_P}$

 なおここで、$ \varepsilon_A$は 需要の広告弾力性、$ \varepsilon_P$ は需要の価格弾力性を表します。

(参考)需要の広告弾力性、需要の価格弾力性

 ここで、需要の広告弾力性、需要の価格弾力性という言葉が出てきたので、念のため、説明しておきます。

 需要の広告弾力性($ \varepsilon_A$)とは、広告費が数%変化したとき、需要が何%変わるかというものであり、需要の価格弾力性($ \varepsilon_P$)とは、価格が数%変化したとき、需要が何%変わるかというものです。

 数式で表すと、次のようになります。

  需要の広告弾力性:$ \varepsilon_A = \dfrac{\partial X / X}{\partial A / A}$

  需要の価格弾力性:$ \varepsilon_P = \dfrac{\partial X / X}{\partial P / P}$

導出方法

 独占企業においては、次のような利益式に直面しているとします。

  $ \pi = P(X) \cdot X(A) – C \cdot X(A) – A \quad \cdots \quad (1)$

 そして、関数 $ P(X) , X(A) , CX$ の意味とは次の通りです。

  価格 $ P(X)$ ⇒ 独占企業であるので、需要に合わせ価格も自由に決定できる形になっています。

  需要(生産量) $ X(A)$ ⇒ 広告に合わせて需要が変わります。

  費用 $ CX$ ⇒ 需要(生産量)に応じて、費用は変わります。

 上記の利益式のもと、$ X, A$ を最適化することになります。

需要

 まずは、需要 $ X$ を最適化するため、$ (1)$ 式を$ X$ で微分すると、

  $ \dfrac{\partial \pi}{\partial X} = \dfrac{\partial P}{\partial X} \cdot X + P – C = 0$

 この式を変形すると、

  $ P -C = – \dfrac{\partial P}{\partial X}\cdot X$

となり、両辺を $ P$ で割り、変形すると、

  $ \dfrac{P – C}{P} = – \dfrac{\partial P / P}{\partial X / X}$

となります。右辺は需要の価格弾力性の逆数になっているので、

  $ \dfrac{P – C}{P} = – \dfrac{1}{\varepsilon_P} \quad \cdots \quad (2)$

が導出できます。

 ここでおまけ的に述べると、左辺の $ (P – C)/P$ はいわゆる「マークアップ率」と呼ばれるもので、価格に対してどれだけ利益を上乗せできるかという式になっています。
 独占企業においては、このマークアップ率が需要の価格弾力性の逆数にすることが最適であることが分かります。

広告

 次に、広告 $ A$ を最適化するため、$ (1)$ 式を$ A$ で微分すると、

  $ \dfrac{\partial \pi}{\partial A} = P \cdot \dfrac{\partial X}{\partial A} – C \cdot \dfrac{\partial X}{\partial A} – 1 = 0$

 この式を整理すると、

  $ P \cdot \dfrac{\partial X}{\partial A} – C \cdot \dfrac{\partial X}{\partial A} = 1 \quad \cdots \quad (3)$

が得られます。

ドーフマン・スタイナーの最適広告費定理

 $ (3)$ 式について、広告費の売上比率 $ A/PX$ で両辺を掛けると、

  $ \dfrac{A}{PX} = (P – C) \cdot \dfrac{\partial X}{\partial A} \cdot \dfrac{A}{PX}$

となり、

  $ \dfrac{A}{PX} = \dfrac{P – C}{P} \cdot \dfrac{\partial X / X}{\partial A / A}$

が得られます。

 ここで、$ (P-C)/P$ は $ (1)$式から、マークアップ率であり、需要の価格弾力性の逆数になっています。
 そして、$ (\partial X / X) / (\partial A / A)$ は、需要の広告弾力性そのものです。

 これらのことから、次式のドーフマン・スタイナーの最適広告費定理が得られます。

  $ \dfrac{A}{PX} = -\dfrac{\varepsilon_A}{\varepsilon_P}$

最後に

 このドーフマン・スタイナーの最適広告費定理は、独占企業のものであり、弾力性が分からないとどうしようもないという面があります。

 ただ、一つの理論的な考えですので、覚えておいて損はないでしょう。

(参考)
 上田 雅夫・生田目崇『マーケティング・エンジニアリング入門

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