はじめに
企業にとって、価格を変化させたとき、需要がどのようになるかは、非常に気になるところです。
このとき、経営学・経済学において、一般的な考えとして、需要の価格弾力性というものがあります。
この需要の価格弾力性について説明します。
需要の価格弾力性
需要の価格弾力性とは、価格が1%上昇したとき、需要が何%減少するかを示した指標です。
需要を $ X$、価格を $ P$ とし、需要の価格弾力性を $ \varepsilon$ としたとき、
$ \displaystyle \varepsilon = \frac{dX / X}{dP / P}$
と表すことができます。ここで、$ dX \, , \, dP$ は変化量であり、$ dX / X \, , \,dP / P$ は変化率を表すことになります。
なお、一般的には、$ \varepsilon$ はマイナスの値になります。
ここで、価格の変化に対して、需要が大きく変化するときにはその財は「弾力的」といい、あまり変化しないときには「非弾力的」とされます。
一般的には、贅沢品は弾力性が高く、日常品は弾力性が低いと言われています。
推計方法
簡単な方法
簡単に計算をしようと思ったら、次式のように、変化前後で、需要と価格について、計算すれば、推計可能です。
需要の価格弾力性 = 需要の変化率 ÷ 価格の変化率
例えば、変化前の需要が200、価格が50で、変化後の需要が100、価格が75とすると、
需要の価格弾力性 = [(100 – 200)/ 200 ]÷[(75 – 50)/ 50] = -0.5 ÷ 0.5 = -1
となります。
回帰分析を使った方法
上記の方法でもいいのですが、1回の変化だけで計算しているので、それが本当の弾力性を表しているのか、一時的なものか分かりません。
そこで、しっかりと推計するには、回帰分析を使う方法があります。
具体的には、この需要の価格弾力性は、次のように、需要と価格について、自然対数をとったもので、回帰分析で推計すれば、$ \varepsilon$ を得ることができます。
$ ln X = \varepsilon \, ln P + C$
なぜかといえば、この式を全微分すると、
$ d(ln X) = \varepsilon \, d(ln P)$
となり、$ d(ln X) = d X / X$ という関係式を使うと、
$ d X / X = \varepsilon \, d P / P$
であり、
$ \displaystyle \varepsilon = \frac{dX / X}{dP / P}$
が得られるからです。
最後に
いずれにしてもデータがないと推計できず、特に回帰分析を行うには多くのデータがないと使えないというのが難点ですが、需要の価格弾力性という概念は、価格というものについて知るときに重要な概念ですので、覚えておきましょう。
参考
上田雅夫・生田目崇『マーケティング・エンジニアリング入門』
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