概要
WACC(Weighted Average Cost of Capital)(加重平均資本コスト)は、一般的にはなじみが少ないかもしれませんが、企業価値などの算定にあたって使われるものです(なお、WACCは「ワック」と言います)。
資金調達にあたって、支払利息や配当金などのコストが発生しますが、それを一つの指標としてまとめたのが、WACCになります(まとめているので、「平均」という言葉が使われています)。
このWACCについて、説明します。
WACC
WACCを数式で説明すると、次のように定義されます。
$ WACC = \dfrac{D}{D+E}r_D (1-t) + \dfrac{E}{D+E} r_E$
$ D$:負債額、$ E$:株式時価総額、$ r_D$:負債コスト、$ r_E$:株主資本コスト、$ t$:実効税率
右辺第1項は、負債による資金調達コストで、税金としては損金になるので、$ 1-t$ が掛けられています。
右辺第2項は、株式による資金調達コストで、株主に支払うコストとなっています。
そして、それぞれをその額で按分することで、資金コストを算出しています(按分しているため、「平均」という名称がついています)。
この計算を行うことで、資金調達にあたって、融資・出資などによる総合的なコストを計算することができます。
計算例
それでは実際に、どのように計算するのかを、例を挙げたいと思います。
次のような場合を考えましょう。
負債額:1,000万円、株式時価総額:4,000万円、負債コスト:5%、株主資本コスト:10%、実効税率:40%
このとき、WACCは、次のように計算でき、資金調達のコストは8.6%となります。
$ WACC = \dfrac{1000}{5000} \times 0.05 \times 0.6 + \dfrac{4000}{5000} \times 0.1 = 0.086$
なお、実効税率については「実効税率の計算方法」を参照してください。
まとめ
通常、事業活動をしていると(特に中小企業)、あまりWACCは無関係かもしれません。
ただ、M&Aなどにあたって、企業価値や事業価値などを算定しようとしたとき、しっかりと計算するときには出てくる考えです。
このような業務に携わる方や、経営学を専門的に学ぶ方は、基本的な話なので、覚えておいて損はないと思います。
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